けが・キズあと|大阪市の精神科・心療内科・形成外科|天満橋ひだまりクリニック

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けが・キズあと

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ケガ(創傷)

皮膚に残った傷あと

ケガ(創傷)とは外的、内的要因によって起こる体表組織の物理的な損傷のことです。急性創傷と慢性創傷に分かれ、慢性創傷は治癒まで4週間以上を要するものを指します。

急性創傷

受傷から治癒まで4週間以内のものを指します。受傷機転により創部の性状が異なり、

  • 擦過傷(すりキズ)
  • 切創(切りキズ)
  • 挫創・挫滅創(裂けたキズ)
  • 刺創(刺しキズ)
  • 咬傷(咬みキズ)

などに分けられます。きずがきれいに治るためには初期治療がとても重要ですので、きずを受傷した場合は、速やかに形成外科のある医療施設の受診をお勧めします。
創傷に対する処置は、深さ、大きさ、組織損傷の度合い、汚染の程度などにより異なります。

慢性創傷

受傷から治癒まで4週間以上かかるものを指します。慢性創傷には、

  • 褥瘡(床ずれ)
  • 糖尿病性潰瘍
  • 血流障害による潰瘍(末梢動脈疾患、静脈うっ滞性潰瘍など)
  • 膠原病性潰瘍
  • 放射線潰瘍

などがあります。急性創傷から慢性創傷になる原因は、全身的な創傷治癒阻害因子(虚血、静脈うっ滞、低栄養、高血糖など)や局所的な阻害因子(血腫、感染、壊死組織、浮腫など)があり、それぞれの原因を改善することでキズは治癒に向かいます。

きずあと(瘢痕)

きずが治る過程には3段階あります。

  1. 炎症期
    受傷直後から数日間で、止血と感染の制御を行っています。
  2. 増殖期
    炎症期の後から3週間程度で、線維芽細胞によってコラーゲンが産生され、肉芽組織と言われる皮下組織が増生されます。その増生された肉芽組織の上を、上皮細胞(皮膚)が覆い、きずが閉じます。ただし、増生された肉芽組織はまだ硬く、色調も赤い状態です。
  3. 成熟期
    増殖期から数年で、増生された過剰なコラーゲンが減少していきます。その結果赤かった色調は白くなり、硬さも柔らかくなっていきます。この状態を成熟瘢痕と言います。

肥厚性瘢痕

肥厚性瘢痕とは、増殖期が延長されてしまった状態です。その結果、過剰に集まったコラーゲンによって傷は赤く、太くなります。また、痒みを伴うことが多いです。きずが関節や首など、体が動くと引っ張られる場所にできると、人の体はきずがまだ治っていないと思い、過剰にコラーゲンを産生して肥厚性瘢痕となりやすくなります。完全に炎症が引くまで、1年から5年くらいかかることもあります。

ケロイド

ケロイドとは、増殖期が終わらず、コラーゲンが産生され続いている状態です。そのため傷跡を超えてどんどん赤い太い傷が広がっていきます。肥厚性瘢痕と比べ、痒みも強いことが多いです。ケロイドの好発部位は、肥厚性瘢痕と同じですが、特に耳(ピアスの跡)、肩、前胸部、下腹部に好発します。

肥厚性瘢痕やケロイドの治療

手術しない方法

飲み薬

飲み薬ではトラニラスト(リザベン®)が有効であるとされています。これは抗アレルギー剤であり、肥厚性瘢痕やケロイドの組織中にある各種炎症細胞が出す化学伝達物質を抑制することにより、痒みをはじめとする自覚症状を抑え、さらには病変自体を沈静化させると考えられているものです。

塗り薬

塗り薬として効果のあるものにはいくつかあります。炎症を抑える目的でのステロイド軟膏・クリームや、非ステロイド系抗炎症剤、ヘパリン類用物質であるヒルドイドソフト軟膏などです。炎症が軽度な肥厚性瘢痕は治癒する可能性がありますが、ケロイドは塗り薬だけで治療することは難しいのが現状です。

貼り薬

ステロイドのテープ(ドレニゾンテープ®やエクラー®プラスター)が用いられます。特にエクラー®プラスターの効果は高く、皮膚が厚い大人には大変有効です。皮膚の薄い小児や高齢者にはドレニゾン®テープでも十分な効果が得られます。かぶれを生じなければ長く使用することで肥厚性瘢痕やケロイドの盛り上がりが改善します。

安静・圧迫・固定具

肥厚性瘢痕やケロイドは、日常動作で皮膚が引っ張られる部位にできて悪化する傾向が強いので、キズあとと周囲の皮膚を固定してしまう方法が有効です。シリコーンテープや医療用の紙テープ(サージカルテープ)、シリコーンジェルシートやポリエチレンジェルシート、また包帯や腹帯、サポーターやガーメント、コルセットなどでも固定も有効です。これらも他の治療法と組み合わせて行うべき治療の1つです。

注射

ステロイド(ケナコルト®)を注射することがあります。赤みや盛り上がり、痛みや痒みは速やかに軽減します。効果が強すぎるとかえって凹んだ瘢痕になることもあります。塗り薬と同じく、ステロイドであるため、周囲の皮膚が薄くなって毛細血管が拡張することも欠点です。また硬い瘢痕の中に注射すると痛みが出るため、痛くない注射・効果的な注射には熟練の技術が必要です。女性ではステロイドの影響で生理不順が生じることもあるため注意が必要です。

レーザー

ケロイドの治療に血管作動性レーザー(血管の数を減らすレーザー)が有効です。代表的なものはNd:YAGレーザーですが、現在では健康保険を適用しての治療はできません。

手術する方法

手術に対する考え方

肥厚性瘢痕やケロイドは、手術しない方法で軽快する場合も多いですが、ひきつれ(瘢痕拘縮)の原因になったり、目立つ場所で醜状が問題となれば、手術の適応となります。しかし、今までは炎症の強いケロイドに関しては安易に手術してはならないとされてきました。なぜならば、ケロイドは再発しやすいため、単に手術するだけでは前より大きなものになってしまうことがあるためです。今でもそのような考えの医師は多いですが、形成外科では、できる限り再発しないような縫い方の工夫をし、さらに術後の放射線治療を行って、完治させることができるようになりました。

切除縫合法

肥厚性瘢痕やケロイドを切除した後に、キズを縫合しなければなりませんが、最も大切なことは、見た目をきれいに縫うことではなく、ケロイドが再発しないように縫うことです。ケロイドは、引っ張られる力がかかるキズにできやすいと考えられるため、引っ張られることを前提に、キズの方向を考え、あらかじめ盛り上げて、丁寧に縫うのがポイントです。深いところでしっかり縫って、肥厚性瘢痕やケロイドができる真皮に力がかからないように工夫します。真皮を縫う前に、創縁がお互いに自然にくっついている状況をつくることが大切です。

術後放射線治療

ケロイドの術後には放射線治療を行うことがあります。手術後のキズが肥厚性瘢痕やケロイドになることを予防する効果があります。しかし、副作用として周囲の正常皮膚への障害を考えねばならず、将来的にわずかながらその部位の発がんのリスクが増える可能性は否定できません。しかし、最近のケロイド治療における放射線治療では、線量や照射方法が改善されていますので、発がんのリスクは最小限に抑えることができています。

手術の後療法について

肥厚性瘢痕やケロイドは、外科的治療および放射線治療で一度は完治したとしても、術後から局所の皮膚伸展を繰り返していれば、やはり再発することがあります。よって、抜糸した後もシリコーンテープやジェルシートで固定したり、ステロイドのテープを用いることで炎症を消失させることが大切です。

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