
適応障害・うつ病
適応障害・うつ病
適応障害とは、ある特定のストレス(職場の人間関係、異動、家庭内の問題など)に対してうまく適応できず、心理的・身体的な不調が出てしまう心の病気です。適応障害の発症には、はっきりとした原因(ストレスとなる出来事)があります。
こうした出来事が起きたあと、3か月以内に症状が現れることが診断の条件となります。
日常生活に大きな支障をきたすほどの不調があるにも関わらず、それが一時的なストレスに起因している点が特徴です。
以下のような症状がよく見られます
適応障害 | うつ病 | |
---|---|---|
原因 | 明確なストレス要因がある | 要因が不明確なことも多い |
発症時期 | 原因となる出来事から3か月以内 | 制限なし |
症状の重さ | 比較的軽い〜中程度 | 中程度〜重度まで幅広い |
回復までの時間 | 原因が解消されると比較的早期に改善 | 長期にわたることがある |
可能であれば、原因となっている環境や人間関係から一時的に離れることが有効です。
例:休職、異動など
当院には公認心理士が在籍しており、院内にてカウンセリングを行っています。
ストレスへの考え方や向き合い方を見直すことで、ストレス対処するためのスキルを身につけることも有効です。
不眠や不安、抑うつ症状が強い場合には、必要に応じて睡眠薬や抗不安薬、抗うつ薬を処方します。副作用や効果には個人差がありますので、丁寧にご説明の上、処方します。
毎日規則正しい生活を送ることは意外と難しいことですが、十分な睡眠とバランスのとれた食事は心身の回復にとって非常に重要です。
気分や体調に合わせて、散歩などの軽い運動を取り入れるのもおすすめです。
適応障害は、誰にでも起こりうる「心のつまずき」です。無理を重ねることで、うつ病などのより深刻な状態に移行してしまうこともあります。
「しんどいな」「つらいな」と感じたら、我慢せずに、心療内科・精神科に早めに相談することをおすすめします。
ご自身の状態を職場にどう伝えたら良いのか、悩まれている方もいらっしゃるかもしれません。病名を職場に伝える義務はありませんが、休職や勤務調整などを希望する場合は、体調不良の理由を共有する必要があります。
「朝、どうしても起きられない」「職場に行くことを考えるだけでつらい」「涙が止まらない」
そんな状態が続いているとき、無理をせず、しっかりと休養をとることはとても大切です。
当院では、精神的な不調での休職をご希望の方へのサポートも行っています。
「仕事を休んだほうがいいのか分からない」
「診断書が必要になるかも」
そんなお悩みも、まずはお気軽にご相談ください。
患者さまの状態を丁寧にお伺いし、医学的な見地から休職が必要かどうかを判断いたします。
「最近、強いストレスを感じており、心身の調子が思うように整わなくなってきていました。病院を受診したところ『適応障害』との診断を受け、一定期間の休職が必要とのことです。
まずは療養に専念し、しっかり回復して戻ってきたいと思っています。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。」
「最近体調不良が続いており、医師からも一定期間の休養が必要と診断されました。診断書もありますので、あわせてご確認いただけますでしょうか。
体調が整い次第、復帰したいと考えております。よろしくお願いいたします。」
医師の診察により、休職が適切と判断された場合は、職場に提出する診断書を作成いたします。診断書には、主に以下の内容が記載されます。
※診断書の作成には別途文書料がかかります。
会社から給与の支給が止まってしまう場合でも、健康保険から「傷病手当金」を受け取れる可能性があります。必要な書類のご案内や、主治医の記入する「意見書」などについてもサポートいたします。
仕事の責任感や周囲の目が気になって、「こんなことで休んでいいのかな」と悩まれる方が多くいらっしゃいます。でも、心の不調は体と同じように、しっかり休むことで回復していくものです。あなたが安心して、また日常生活やお仕事に戻れるよう、私たちが丁寧にサポートいたします。
心のエネルギーが落ちてしまう「こころの風邪」
日本では15人に1人(女性が男性よりも多い)が生涯で一度はうつ病を経験すると言われています。20代〜50代の働き盛りの世代に多く見られますが、全ての年代に発症する可能性があります。発症にはストレス、性格傾向、生活環境、遺伝的要因など、さまざまな背景が関係します。
うつ病には明確な「ひとつの原因」があるわけではありません。
以下のような要素が重なって発症することが多いです。
うつ病は、誰にでも起こりうる「こころの病気」のひとつです。
気分がひどく落ち込んだり、何もやる気が出なかったり、今まで楽しいと感じていたことが楽しめなくなったり…。
まるで「心のエネルギーがなくなってしまったような状態」とも言えます。
決して「甘え」や「気の持ちよう」ではありません。脳の働きや神経伝達物質のバランスが崩れることによって、心と体にさまざまな不調が現れる病気です。
「うつ」という気分の変化だけではなく、2週間以上続く不眠、体のだるさなどの症状も重要です。周囲の方は、仕事のスピードの低下・ミスが増える・食事量が減るといった変化に気をつけてください。
うつ病は「治療できる病気」
うつ病は、適切な治療と休養によって回復が見込める病気です。
ひとりひとりの症状や生活環境に合わせて、下記を組み合わせて行います。
無理のないペースで回復を目指すことが大切です。
急性期(症状が重い初期)は「なにもしない」が正解です。「規則正しい生活」も後回しで、とにかく休んでください。
うつ病の患者様は休むことに罪悪感を覚えることがありますが、「休むことが仕事(治療)です」とお伝えしています。
少し症状が和らいできた頃には、「生活リズムの回復」を目指すことをお勧めしています。生活リズムが崩れてしまうと、復職の際に苦労することになりかねません。
生活リズムの回復のためには、まず、朝一定の時間に起きることです。体内時計を調節しているメラトニンは起床時間によって分泌がコントロールされているので、朝起きないと、夜に体が眠りに入る状態になれないのです。
体内時計や生活リズムを整えるには、日光が欠かせません。午前中に明るい光を浴びることが特に重要なので、①散歩、散歩が難しければ、②歯磨き・洗面後は明るい日光を浴びることができる窓際などで過ごすと良いでしょう。
そして、少量でも構わないので「3食とること」
食欲が十分に回復していなければ、無理に「ちゃんとした食事」をとることはありません。好きなもの、食べやすいものを少しでもおなかに入れるだけでも構いません。
一日3回、おなかに食べ物を入れることが重要です。
抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)のバランスを整えることで、気分や意欲の改善を助けるお薬です。
種類によって作用や副作用に違いはありますが、どれも症状の改善をサポートする大切な治療手段の一つです。
特徴
主な副作用
代表的な薬
特徴
主な副作用
代表的な薬
特徴
主な副作用
代表的な薬
特徴
主な副作用
代表的な薬
特徴
主な副作用
代表的な薬
総称名
薬効分類名
特徴
主な副作用
抗うつ薬には副作用が出ることもありますが、多くは一時的で、体が慣れることで次第に軽くなります。
主な副作用 | 対処法・説明 |
---|---|
眠気・だるさ | 夜に服用する、量を調整することで軽減 |
吐き気 | 食後に飲むことで改善することが多い |
口の渇き | 水分補給、ガム・飴などで対応可能 |
性機能の低下 | 薬の調整・変更で対応できることも |
めまい・ふらつき | 起立性低血圧に注意。急に立ち上がらないなどの工夫を |
副作用がつらいときは、無理せずご相談ください。
お薬の調整で軽くなることがほとんどです。
抗うつ薬を飲み始めてしばらく経つと、「もう大丈夫かも」「薬はできれば飲みたくない」と感じる方も少なくありません。お薬をやめるタイミングは、「気分がよくなったから」だけではなく、症状が安定している期間の長さや生活状況もふまえて判断します。
症状がよくなったように感じても、自己判断で急に服薬を中止すると、症状の再発・悪化(「ぶり返し」が強くなることもあります)や離脱症状(めまい、頭痛、不安感、しびれ感など一時的な体調不良)が出ることがあるので注意してください。
お薬の中止や減量は、医師と相談しながら段階的に行うことが大切です。無理のない形で「卒薬」できるよう、一緒に考えていきましょう。
抗うつ薬は、依存性がある薬ではありませんので、長期間服用しても体に悪いということは基本的にはありません。定期的な診察の中で、状態を見ながら適切なタイミングで減薬を検討します。
少しずつ減量することで、症状の再燃やお薬の離脱症状(めまい、頭痛、不安感、しびれ感など一時的な体調不良)のリスクを減らすことができます。
当院では、定期的な診察で状態を確認しながら、必要な期間だけ薬を使っていくことを大切にしています。
妊娠や出産の時期は、心と体に大きな変化があり、メンタルの不調が出やすい時期でもあります。この時期に抗うつ薬が必要になることもあり、「赤ちゃんへの影響が心配」という声も多く聞かれます。
現在のところ、抗うつ薬の中で奇形率を高める可能性が報告されているのは、SSRIのパキシル、三環形抗うつ薬(アモキサンを除く)、四環系抗うつ薬(大量使用時)のみとなっています。
ただし、リスクを高めると報告されている薬もリスクをわずかに高めると報告されているだけですので、服薬中に予想外の妊娠が判明した際も、過度に心配しすぎないでください。
妊娠中・授乳中でも使用できる抗うつ薬があります。赤ちゃんへの影響が心配な方も、必ず医師にご相談ください。安全性を考慮した治療方針をご提案いたします。
また、お薬だけが治療ではありません。必要に応じて、カウンセリングや生活リズムの見直し、休養も治療の大切な一部です。
抗うつ薬の服用は、うつ病の回復を支える大切なサポートです。
「薬は怖い」と感じる方もいらっしゃいますが、正しく使えば心と体を回復へと導いてくれる心強い味方です。
「なんとなく毎日がつらい」「朝がどうしても起きられない」
そう感じたときは、我慢しすぎる前に当院に相談してみてください。
うつ病は、決して特別な人だけの病気ではありません。
どんな方でも、ある日突然なる可能性があるものです。
うつ病の治療は「一人でがんばらない」ことが大切です。
少し勇気がいるかもしれませんが、今のつらさが少しでも楽になるように、あなたが自分らしく過ごせるように、あなたのこころの回復を私たちは全力でサポートします。
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