
認知症
認知症
認知症は、後天的な脳の器質的障害によって脳の働きが低下することで、日常生活に必要な「記憶」「考える力」「判断力」「言葉の理解」などの能力がうまく働かなくなり、日常生活に支障が出てくる状態です。
「認知症になる」というのは、特別なことではありません。
早めに気づき、適切なケアや治療を受けて進行を遅らせることが大切です。
加齢に伴う物忘れと認知症は、どちらも記憶に関係する症状ですが、その内容や進行具合には大きな違いがあります。
特徴 | 加齢による物忘れ | 認知症による記憶障害 |
---|---|---|
忘れる内容 | 一部だけ | 体験そのもの |
思い出す力 | ヒントがあれば思い出せる | 思い出せないことが多い |
進行性 | ほぼ進行しない | 徐々に進行する |
日常生活 | 大きな支障はない | 明らかな支障が出る |
もっとも多いタイプの認知症です。脳の中に“アミロイドβ”というたんぱく質がたまり、脳の細胞が少しずつ壊れていきます。
などの症状がゆっくりと進んでいきます。お薬で進行をゆるやかにすることができます。
「幻視(見えないものが見える)」や「日によって調子に波がある」のが特徴の認知症です。
などの症状がみられます。お薬で進行をゆるやかにすることができますので、副作用に留意しながら、お薬の調整を行います。
脳梗塞や脳出血のあとに起こる認知症です。
脳の血管の病気が原因のため、再発予防や生活習慣の見直しが大切です。
主に前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症する認知症の一種です。比較的若い世代(50~60代)にも見られることがあり、もの忘れよりも、性格や行動の変化(反響言語、常同行動など)が目立ちます。
長期間にわたり多量の飲酒を続けた結果、脳に慢性的なダメージが蓄積され、記憶力や判断力、理解力といった認知機能が低下する状態です。
などの症状がみられます。アルコール性認知症の治療には、「禁酒」が最も重要です。完全に飲酒をやめることで症状の進行が抑制され、症状の改善が見られることもあります。
記憶は、主に脳の海馬(かいば)という部位が司っています。特にアルツハイマー型認知症では、この海馬が早期にダメージを受けるため、記憶障害が最初に現れやすいのです。
<認知症で見られる記憶障害の特徴>
「通常の物忘れでは「忘れたこと自体」は覚えていることが多いですが、
認知症では、出来事そのものが完全に記憶から抜け落ちてしまいます。
例)「病院に行った」こと自体を全く覚えていない
時間、場所、人物の見当識障害がみられます。
認知症が進行すると、簡単な足し算や引き算などの計算も難しくなってきます。買い物の際、お釣りの計算が難しくなり、財布が小銭で一杯になりがちです。
遂行機能とは、「目的をもって行動を計画し、順序立てて実行し、問題があれば修正する力」です。この機能が障害されると、日常生活の段取りや複雑な作業がうまくできなくなります。
例)料理ができなくなる(献立を考える、手順を整理して料理を作ることが困難)
失語
初期では、「健忘失語(けんぼうしつご)」がみられます。名前が出ないために、会話中「えーっと」「ほら、あれよ」などの代名詞が増えることが特徴です。
失行
運動機能は正常なのに、「やり方」がわからなくなる状態。
例)ハサミや箸などが使えない
失認
感覚機能は正常なのに、対象を正しく認識できない状態。
視覚の障害はないのに、目で見たものの空間的な関係や位置関係を理解することが難しくなる状態です。
症状の種類 | 具体的な内容 |
---|---|
幻覚・妄想 | 「財布が盗まれた」などの思い込み |
徘徊 | 目的もなく出かけて迷ってしまう |
睡眠障害 | 夜眠れない、昼夜逆転する |
感情の変化 | 急に怒ったり、落ち込んだりする |
意欲の低下 | 好きだったことに興味を示さなくなる |
【こんな病気も「認知症のように見える」ことがあります】
認知症と似た症状を出すけれど、治療でよくなる病気もあります。こうした病気を見逃さないために、専門的な検査が必要です。
元気がなくなり、集中力が落ちることで、物忘れが目立つように見えることがあります。
歩きにくい、物忘れ、尿もれの症状がある場合は、脳脊髄液が過剰にたまる正常圧水頭症の可能性があります。
頭を打ったあと、数週間ほど時間が経ってから、物忘れやぼんやりが出ることがあります。
通常、40歳~60歳で発症しますが、発症年齢が早いほど、その後の症状進行が急激である場合が多いとされています。仕事や家庭生活への影響が大きいため、早期の診断と適切な支援が重要です。
記憶力や判断力、注意力が低下するため、以前は問題なくこなせていた仕事でもミスが増えてしまいます。
家族のサポートが増えることで外出が減り、家族全体が社会的に孤立しがちになります。
介護保険制度は原則として65歳以上の高齢者を対象としていますが、40歳から64歳までの方でも、特定疾病(16種類)のひとつである「若年性認知症(初老期認知症)」と診断された場合、介護保険の申請が可能です。この場合、要介護認定を受ければ、訪問介護やデイサービス、福祉用具の貸与など、さまざまな介護サービスを利用できます。
若年性認知症は、仕事や家庭の役割が多い時期に発症するため、本人にも家族にも大きな負担がかかります。介護保険を活用することで、生活の質を保ち、家族の介護負担を軽減することができます。
介護保険の申請には、「主治医意見書」が必要になります。申請手続きは市区町村の窓口(介護保険担当課)や地域包括支援センターで相談できます。
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